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東京高等裁判所 平成6年(ネ)273号 判決 1994年7月27日

主文

控訴人ら及び被控訴人の各控訴を棄却する。

ただし、原判決主文第三項を次のとおり更正する。

「被控訴人の控訴人喜多ヨシ子に対するその余の請求及び控訴人喜多茂に対するその余の主位的請求をいずれも棄却する。」

両事件につき控訴費用は各自の負担とする。

事実

第一  第二七三号事件の控訴の趣旨及び答弁

一  控訴人らの控訴の趣旨

原判決中控訴人ら敗訴の部分を取り消す。

被控訴人の請求を棄却する。

訴訟費用は第一、二審を通じ、被控訴人の負担とする。

二  被控訴人の答弁

控訴人の控訴を棄却する。

第二  第三七三号事件の控訴の趣旨

一  被控訴人の控訴の趣旨

原判決を次のとおり変更する。

控訴人らは被控訴人に対し、連帯して、全四七六三万〇九八四円及びこれに対する平成五年二月九日から支払済みに至るまで年一四パーセントの割合による金員を支払え。

訴訟費用は第一、二審を通じ、控訴人らの負担とする。

二  控訴人らの答弁

被控訴人らの控訴を棄却する。

第三  当事者の主張

原判決七枚目表五行目から六行目にかけての「一億一六七七万二七七八円」を「一億一六七七万七二二八円」と訂正するほかは、原判決記載のとおりであるから、これを引用する。

第四  証拠(省略)

理由

一  当裁判所も被控訴人の請求は、原判決の認容した限度でこれを認容すべきであり、それを超える部分は棄却すべきであると判断する。

その理由は、次のとおり付加するほか、原判決理由欄第一及び第二記載のとおりであるから、これを引用する。

二  1 原判決一五枚目裏八行目から九行目にかけて「一八三一万〇一六八円」の次に「(原判決別紙(二)1ないし4の各債務の期限の利益喪失による弁済期は同一であるから、民法四八九条四号により各債務の額に応じて配当金を充当した結果の残額合計)」を加える。

2 同一の債権者に対して二人以上の債務者がそれぞれ別個の債務を負担している場合において、これら債務の支払を担保するために抵当権設定者が一つの抵当権を設定したとき、すなわちいわゆる共用抵当権が設定されたときは、これら二以上の債権はいずれも右抵当権により同順位で担保されているものであるから、これらの債権の全額を満足させるに足りない配当金が配当されたときは、これらの債権は同等に扱われるべきであり、配当金は各債権額に応じて按分されるべきである。このことは、共用抵当権の設定者が被担保債務者の一人であるときも同様である。共用抵当権設定者は自己以外の債務者のためにも合意により自己の財産を同順位で担保に供しているのであるから、設定者に不測の損害を生じさせたり不公平となることはないのであって、弁済の原資を提供した設定者の弁済の利益を考慮する余地はない。民法第四八九条等の法定充当の規定は、同一の債務者に対する数個の債権を持つ債権者に割り付けられた配当金をそれぞれの債務の弁済に充当する場面において適用されるべきものであって、本件のような共用抵当権における配当金の割付けに適用されるものではない。

三  結論

以上のとおりであって、原判決は正当であり、控訴人ら及び被控訴人の各控訴はいずれも理由がない。なお、被控訴人喜多茂に対する予備的請求は一部認容であり、認容されなかった部分は、主位的請求として認容された結果、解除条件が成就し、訴訟係属がなくなったので判断する必要はないから、原判決主文第三項を本判決主文第二項のとおり更正することとする。

よって、訴訟費用の負担について民訴法第八五条、八九条、九三条を適用して、主文のとおり判決する。

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